抄録
本論文では、人工生命的手法を用いた画像の新しい領域分割方式を提案する。画像の領域分割は画像認識やコンピュータビジョン、画像符号化、リモートセンシングなどにおける重要な要素技術の一つである。従来より数多く研究されているが、提案方式は画像処理と人工生命を融合した新しい領域分割法である。提案方式は二つの段階から成る。まず最初の段階では、人工生命である個体を画像上に仮想的にばらまく。個体は、自分と画素との類似度に基づいて移動し足跡を残す。この足跡が領域を形成する。このとき個体は足跡を残すと同時に、一度訪れた画素に他の個体を寄せつけにくくする仮想的なフェロモンを置く。このフェロモンにより個体間での相互作用が生まれる。第二段階では、領域の統合により画像から対象物を抽出する。提案方式の特徴として、パラメータの設定が容易であることがあげられる。これは、従来法では困難であった領域の境界を決める閾値問題を、人工生命の仮想個体により解決を図っている。計算機実験によって、提案方式の有効性を確認している。