2000 年 12 巻 2 号 p. 252-
本研究は、インタラクティブ進化的計算(IEC)を応用した補聴器フィッティングシステム(IEC-HAFS)を提案・評価するとともに、新しい聴覚研究のアプローチを提案している。前者については、IECの実用化に向けたインタフェース改善を行いIEC-HAFSを構築した。そして、聴覚障害者によるシステム操作と心理実験を通し、IEC-HAFSの有効性を示した。後者については、人間の聴覚特性に関する事前知識を用いずIEC-HAFSで最適化されたパラメータを解析し、各個人の音の大きさ知覚に関する知見を得た。IEC-HAFSは原理的に専門家のサポートや事前知識が不要で補聴器ユーザが自分で好きなようにフィッティング可能、という従来方にない利点を持つ。さらに、提案した人間の評価情報のみで得たパラメータ設定を解析するというトップダウンアプローチが、聴覚研究以外の感性や認知分野にも展開されることが期待できる。