抄録
非線形システムのモデリング手法のひとつとして, 多層型ニューラルネットワークでの誤差逆伝播学習がある.またニューラルネットワークに類似した学習法を用いる逐次型のファジィモデリング法も提案されていて, ニューロ・ファジィとよばれ家庭電化製品にも応用された.これらの学習方式は, 与えられた入出力データに基づくもので, いわゆる教師データは出力値が直接与えられる場合が多い.本研究では, 出力データが直接与えられず, 代わりに一対の入力データの組における各々の出力の差または比が教師データとして与えられる場合の学習法について述べる.2つの要素の一対比較に基づく数量化の方法として, 階層化意思決定法(AHP)における固有ベクトル法やGuttmanの数量化法などがある.これらの手法と提案法で, 小型の加振器を用いた実験により, 人間の感覚量の数量化を行った結果を報告する.本研究の数量化法はデータ解析的手法に代わる方法であり, 与えられた複数個のアイテムに対する間隔尺度や比例尺度での数値が得られるだけでなく, 入出力データ点を滑らかに補間するC^∞級の連続関数としてモデル同定される.