日本ファジィ学会誌
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ファジィ事象の可能性分布に基づく簡易意思決定法
植村 芳樹坂和 正敏
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1993 年 5 巻 3 号 p. 528-536

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抄録
実社会における意思決定は, あいまいな環境のなかで取り扱われている.統計的な意思決定方法として, ベイズ意思決定理論が提案されている.奥田ら, 田中らは, 自然の状態上のあいまいなファジィ事象を考え, Zadehが定義したファジィ事象の確率に基づく意思決定法(ファジィ・ベイズ意思決定法)を定式化した.また, 植村はファジィ事象におけるファジィ効用関数を考察し, このファジィ効用関数による意思決定方法を構築した.さらに, 植村と田中は, 田中と石渕が提案した正規可能性理論に基づく, 意思決定法(正規可能性決定理論)を構築した.ここで, この正規可能性決定理論はファジィ事象の可能性測度に基づく意思決定理論である.これらの意思決定方法では, ファジィ事象のあいまいさはすべてファジィ効用関数に含まれファジィ事象の可能性には直接的に反映されていない.従って, 本論文では, ファジィ事象の可能性分布を導き, この可能性分布に基づく意思決定法則の定式化を目的とし, 2種類の意思決定方法を提案する.また, 自然の状態の対称な単峰形可能性分布とファジィ事象の対称な単峰形のメンバシップ関数が, 意思決定者の知識と確信により設定されている意思決定問題を研究対象とする.まず, 拡張原理によりファジィ期待効用の可能性分布を導出し, ファジィ数の大小関係の指標に基づく意思決定法を提案する.しかし, この意思決定方法は, 拡張原理に基づくため, ファジィ期待効用のあいまいさが増大する危険がある.次に, ファジィ効用関数の代表値とファジィ事象の可能性分布の代表区間を導く方法を提案し, これらの代表区間に基づく簡易意思決定法を提案する.また, 奥田らが提案しているファジィ・ベイズ意思決定法におけるファジィ効用の設定方法を明らかにする.
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© 1993 日本知能情報ファジィ学会
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