抄録
ファジィ集合の計算機上での表現と処理は, ファジィ理論を用いた知的システム構築の基盤として重要である.このファジィ集合はさまざまな形のデータ構造で表現することが可能であり, それらを統一することは困難である.本論文では, オブジェクト指向概念が複雑なデータ構造を抽象化し統一的に操作する力を持つことに注目し, オブジェクト指向概念に基づいたファジィ集合処理の可能性について検討し, 具体的処理方法を提案する.プロトタイプシステムとして開発されたファジィ集合処理システムFOPSでは, アレイ型ファジィ集合(AFS)とペア型ファジィ集合(PFS)の2つの基本的なファジィ集合表現の統一的な取扱いを実現し, さらにファジィ集合の数値としての取扱いを許すことにより, 一般的なファジィ集合を容易に操作することを可能としている.これにより, オブジェクト指向概念のデータ抽象の力と多態制がファジィ集合処理に対して有効である事が示された.また, 用いた内部データ表現とFOPSの有効性の評価についても示す.