日本ファジィ学会誌
Online ISSN : 2432-9932
Print ISSN : 0915-647X
ISSN-L : 0915-647X
観測された時系列データの決定論的性質を測る軌道平行測度法
藤本 泰成五百旗頭 正谷村 隆義
著者情報
ジャーナル フリー

1997 年 9 巻 4 号 p. 580-588

詳細
抄録

一見不規則に見える時系列が、実は決定論的ダイナミクスによることが多くあり、それが決定論的カオスと称されていることはよく知られたことである。現在、あるシステムを観測したときの時系列データが少しのノイズを含んでいるとしても、一見しただけではそのデータがノイズを含んでいるかどうかを区別することはできない。一般的によく知られたこのような問題に対する解決法として、FFT(Fast Fourier Transformation)解析によって特徴のある周波数を抽出する手法がある。しかし、カオス時系列データでは周波数成分を無限個存在し、連続するパワースペクトルをもつ。そこで本稿では、決定論的時系列データに含有する確率過程的性質の影響度を測るためのカオス理論に基づいた、軌道平行測度法(Trajectory Parallel Measure Method)を提案する。この手法の特徴は、再構成した位相空間からある程度任意に埋込ベクトルをサンプリングして、それぞれの埋込ベクトルを基準とした局所空間における軌道のばらつきを統計的手法に基づいて指標とするものである。そして、計算機で発生させた決定論的カオス時系列、ホワイトノイズ、そして決定論的カオス時系列データにホワイトノイズを加えた時系列データ、の3つのケースにこの手法を適用した結果を紹介し、有用性を示す。

著者関連情報
© 1997 日本知能情報ファジィ学会
前の記事 次の記事
feedback
Top