抄録
全面マスク装着作業によってマスク面体に付着する皮脂やタンパク質・臭い・微生物の除去・低減・不活化に有効な洗浄方法の確立のための基礎実験として、マスク素材に付着させた有機物汚れとその臭気物質の除去・低減効果、全面マスクに付着させたネコカリシウイルス不活化効果について強アルカリ性電解水と微酸性電解水による洗浄(濯ぎ洗い、シャワー洗浄)を試験した。
1) 強アルカリ性電解水(pH 11.5±0.2)による有機物汚れ(オリーブオイルとドライイースト、カレー粉またはブルーチーズとの混合物)とその臭気の除去について以下の結果を得た。①濯ぎ洗いでもシャワー洗浄でも、いずれの汚れも除去率は重量比で90%以上となり、比較対照の水道水(除去率67%)より顕著に高かった。ATP指標でも除去率は95%を示し、水道水(35%)より顕著であった。特に、シャワー洗浄での除去率は99.9%を記録した。②臭気物質の低減についてGCMS分析した結果、強アルカリ性電解水によるシャワー洗浄が顕著に効果的であった。難水溶性の臭気物質(クミンアルデヒド、アネトール)についても高い低減効果を示した。ニオイセンサや官能試験による評価においても傾向は同じであった。
2) 全面マスク表面付着ネコカリシウイルス(ノロウイルスの代替)の不活化に関しては、微酸性電解水による浸漬および強アルカリ性電解水と微酸性電解水の併用処理において顕著な不活化効果(TCID50対数減少値5.0以上)が認められた。