抄録
バナジウムの抗糖尿病作用が注目されており、バナジウム含有をセールスポイントとする天然水が多数販売されているが、多くの場合バナジウムの存在形態は不明である。これまでバナジウムの分別定量のために二つの方法が開発されている。四価および五価バナジウムを異なる溶媒で抽出し、黒鉛炉原子吸光で分析する方法と液体クロマトグラフィー・誘導結合プラズマ質量分析法である。本研究ではイオンクロマトグラフィーが四価および五価バナジウムの分離に有効であることを示した。次に五価バナジウムが水試料中に存在する場合には、水試料を電気分解することで四価バナジウムに還元できることを示した。最後に、電子スピン共鳴分光法は、四価バナジウムに由来する8本のシグナルを検出することができることから、水の電気分解による五価バナジウムの4価バナジウムへの還元の検出に有効であることを示した。以上より、我々は、これら三つの方法の組合せは、天然水などの水試料中のバナジウムの分別定量に非常に有効であることを提示した。