日本庭園学会誌
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論文
明治期の庭園におけるイギリス風景式庭園の影響
村岡 香奈子
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2011 年 2011 巻 25 号 p. 25_31-25_39

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抄録

明治中期に造られた山縣有朋の無隣庵や岩崎久彌茅町本邸の洋館前の庭は、イギリス風景式庭園の影響を受けたものであるとの指摘がある。しかし、イギリス風景式庭園の各段階における代表例とされるローシャム、スタウアヘッド、ブレナム・パレスにつき調査し、日本の明治期の庭園と比較したところ、このような見解を裏付ける実質的な類似点を見出すことはできない。イギリス風景式庭園と日本の明治期の庭園では、建物周辺の庭園デザインが異なり、庭園内の景物のモチーフや使い方にも共通点は見られない。明治期の日本の庭園における園路のデザインについても、日本の伝統的な造園手法から離れてイギリス風景式庭園の影響を受けたものと考えるべき根拠に乏しく、さらに、山縣や岩崎久彌が渡欧した時期とイギリス風景式庭園の最盛期にずれがあることから、明治期の新興勢力が渡欧の際に見聞した風景式庭園の影響が日本の庭園に持ち込まれたものであるという見解も、イギリス庭園史の流れからすると不自然ではないかと考えられる。

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© 2011 日本庭園学会
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