抄録
仏教の東漸に関連させて、インド仏教の庭園デザインと西暦6世紀末頃までの古代中国の庭園との関係を考察する。漢訳仏典に記されたインド仏教の庭園は、いわば豪華な「方池を中心とする庭園」といえそうである。一方、古代中国の庭園は、「池と島の園林(庭園)」あるいは「池と築山の園林」であったらしく、古代中国においてインド仏教の庭園デザインが採用され流行していたことをしめす記録は知られない。この点は、やや時代が下るものではあるが、考古学的研究により韓国や日本で確認されている方池を直ちに仏教デザインと解釈してよいかどうかなどについて疑問を投げかけるものである。