2020 年 2020 巻 34 号 p. 34_1-34_11
金栄山妙成寺(石川県羽咋市)は、北陸における日蓮宗本山であり、加賀藩前田家の菩提寺のひとつである。本論文は、妙成寺書院にともなう庭園について3次元測量と直接計測、一部の試掘調査をおこない、庭園の地割と意匠の客観的な把握に努め、空間と景観構成の特色の把握を目的とした。研究の結果、庭園の地割としては、(1)平地、(2)池泉、(3)鶴石組、(4)亀石組、(5)斜面、の大きく5つによって構成されていた。さらに、鶴と亀の祝儀の庭を基本としつつ、祖師堂と五重塔を大胆に庭園に取り込んだ主要伽藍の借景に特徴が認められ、池泉東岸正面の平石と寿福院墓とが一直線上に並ぶという、興味深い空間と景観の構成を有していることが分かった。