集団力学
Online ISSN : 2187-2872
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日本語論文(英語抄録付)
中国都市部におけるコミュニティ創造に向けた住民ネットワークの形成
---政策的・歴史的考察と事例研究---
叶 好秋陳 巧香杉万 俊夫
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2017 年 34 巻 p. 288-319

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抄録

本論文は、①中国都市部におけるコミュニティの崩壊過程を論じるとともに、②コミュニティの再創造に向けた中国政府の政策を論じる。さらに、③政策実現のためには、「社会組織」(公益サービスを担う非営利の住民主体組織)が必要であることを提案し、④その第一歩として、まずは住民間ネットワークをつくろうとする新しい試み――厦門市における「同好会」の事例――を、現場研究に基づき紹介する。最後に、⑤「同好会」活動が、社会組織としての機能を持つまでに成長する可能性を考察する。<br> 1 章では、1978 年の改革開放以前のコミュニティであった「単位」と、その崩壊について論じる。「単位」は、同じ勤務先に働く住民が居住するコミュニティであったが、改革開放政策の開始により、「単位」は崩壊し、「コミュニティなし」の状況に陥った。<br> 2 章では、この状況を打破するために、政府によって提案された「社区」建設政策について論じる。それによって地方政府と個々の世帯の間を媒介する機能を持つことが目指された。 しかし、公益サービスは専ら行政の義務と考え、自らは手を貸そうとしない個別化した住民が相手では、「社区」がかつての「単位」の機能を代替するのは、極めて困難である。<br> 3 章では、トップダウンの「社区」建設の困難を克服する方途として、ボトムアップの「社会組織」を育成する必要性を主張する。「社会組織」は、公益サービスを提供する非営利の住民組織である。しかし、問題は、個別化し、かつ受動的な住民の中に、どのようにして「社会組織」を形成するか、である。<br>  4 章では、「社会組織」の育成を意図したユニークな試みとして、厦門市における「新厦門人社会組織孵化基地」の「同好会」活動を、筆者の現場研究をもとに紹介する。その特徴は、将来的に、「社会組織」へと発展することが意図されていることである。<br>  5 章では、厦門市の「同好会」活動が「社会組織」育成に発展する可能性を論じる。

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