2020 年 37 巻 p. 3-19
活動理論を学校経営に応用し、組織活性化のための発見の道具として活用することを試みた。 公立小学校での特別支援教育の実践においては、支援を必要とする児童の増加をはじめ課題が複雑化する一方、対応するスタッフの人員は限られその負担も大きくなっている。当該実践校の現状と課題を参与観察とインタビューによって精査したうえで、活動理論を用いて解決の方略を策定し実践した。
第1に、校内の組織体制に着目し、特別支援教育に関する委員会について、活動理論を用いて「チーム」と「道具」の刷新を試みた。特別支援教育を担当する組織のメンバーシップに変更を加え、新たな参加者や役割を加えて体制を見直すとともに、会議のシステムや検討内容、話し合いのルール等を刷新した。あわせて、コミュニケーションの道具についても新規様式の追加とその電子化などの変化を導入した。
第2に、特別支援教育を担当する人員について、教師と支援員という異なるスタッフから構成されていること、それぞれの集団内部にも差異のあることに着目した。教師と支援員、および、支援員同士のコミュニケーションを活性化するために、「チーム」と「道具」双方の観点から変化を導入した。具体的にはミーティングの設定や開催時間帯の変更、話し合いの道具となる新たな資料の追加などを行った。
これらの試みを通して、特別支援教育に携わる教師や支援員のコミュニケーションが活性化し、複数の支援策が主体的に討議されるなど、担任の負担感軽減にもつながった。さらに、まずは積極的に行動してみようという前向きな機運が組織内に醸成された。活動理論のもたらす可能性と今後の課題についてあわせて考察した。