2011 年 120 巻 5 号 p. 877-885
地球上にいつ生命が誕生したのだろうか? この疑問に答えるために,世界最古の地層を探し,その痕跡を突き止める努力がなされてきた。西グリーンランドイスア地域には38-37億年前の太平洋型造山帯が見られるが,そのなかの付加体を構成する海溝堆積物中に石墨が産する。この石墨の炭素同位体組成は起源推定に有用であるのだが,この堆積岩はのちに300-600℃程度の広域的な変成作用を被っているため同位体組成は改変されている。そこで変成作用による影響を考慮すると,もとの炭素同位体組成は-25から-30‰程度であったと予測される。これらの同位体的特徴は,地球誕生後8億年時点ですでに生物は地球に出現していたことを示す。