地学雑誌
Online ISSN : 1884-0884
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表紙
石油・天然ガス根源岩かつ貯留岩としての珪質岩
女川層の“硬軟互層(ポーセラナイトと珪質泥岩)”(表面)
(場所:秋田県由利本荘市小菅野久保田川沿い林道)
モンテレー層の珪質岩とフラクチャー中の油(裏面)
(場所:米国カリフォルニア州ピスモビーチ)
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2013 年 122 巻 1 号 p. Cover01_1-Cover01_3

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抄録

 (表面)珪藻殻起源のシリカ分を多く含む珪質岩は米国カリフォルニア州に分布するモンテレー層をはじめとし,環太平洋地域に中新統~下部鮮新統として広く分布する(Ingle, 1981; Isaacs, 1987).本邦東北地方に分布する珪質岩の代表は,中期~後期中新世女川層である.女川層の露頭での見かけは地域や層準でさまざまである.そのなかでも特徴とされているのが,この写真のようにいわゆる“硬軟互層”を呈することである.互層の硬質部は厚さ数10cm以下のポーセラナイト,軟質部は厚さ10cm以下の珪質泥岩からなる.女川層珪質岩は本邦で最も優秀な石油・天然ガス根源岩として知られ,通常,有機物含有量はポーセラナイトで0.1~3wt%,珪質泥岩で2~6wt%である.また,女川層珪質岩は,その孔隙が埋没続成に伴って拡大することで貯留岩ともなり,より深部から移動してきた石油・天然ガスを貯留して油ガス層となっていることが知られている.本露頭から数km西方の由利原–鮎川油ガス田は,このような油ガス層が発達する典型例で,その探鉱開発が1990年ころより行われてきた(辻ほか, 本号).また最近,同油ガス田での女川層珪質岩中の油はシェールオイルとしての再評価もなされつつあり,エネルギー資源論の観点からも注目を集めるようになっている.
(写真:斉藤雄一,解説:辻 隆司・早稲田 周・横井 悟 1988年5月22日撮影)
 (裏面)モンテレー層は有機物に富みカリフォルニア州の主要油根源岩となっている.明るい色の硬質部はシリカに富むチャートで,フラクチャーを黒い油が埋める.本露頭でのシリカの結晶相はOpal-CTが主体で最大埋没時でも石英への相転移温度には達していないので,おそらく有機物も石油生成にたる熱を被っておらず根源岩としては未熟成である.フラクチャーを埋める油はベーズンのより深い場所の熟成したモンテレー層で生成され,構造上位のこのフラクチャー貯留岩に移動したと推定される.モンテレー層の珪質岩はシェールオイルとして100年以上石油が生産されているが,1969年の沖合での大規模油田発見以降非在来型石油貯留岩として注目されてきたものである.
(写真・解説:星 一良 1992年3月撮影)

© 2013 公益社団法人 東京地学協会
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