地学雑誌
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表紙
ドイツ中部,チューリンゲンの森に産する古生代ペルム紀赤色層
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2021 年 130 巻 3 号 p. Cover03_01-Cover03_02

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抄録

 目に焼きつく赤色の水平層は,約2億5千万年前(古生代ペルム紀末)に超大陸パンゲア内部の非海成ゲルマン盆地で堆積したZechstein層である.古生代最後の地質時代は,二畳紀(Dyas)と20世紀中頃まで呼ばれていた.その名前はドイツで識別されたRotliegende層と上位のZechstein層の二層からなることに由来する.しかし,後にウラル山麓ペルミ(Пермь)に産する同時代層が世界対比により有効であると評価され,二畳紀はペルム紀(Permian)と呼ばれるようになった.それでも,Zechstein層は,当時のパンゲア内陸部での強い乾燥気候下で堆積した赤色層,岩塩などの蒸発岩,含銅黒色頁岩などの独特の地層からなること,また保存のよいサンショウウオやゴキブリなどの化石を多産することから,当時の超大陸内部の環境記録として今なお重要視されている.

 かつての東独西縁に位置するチューリンゲンの森(Thüringer Wald)は,ドイツ中央部の低い山地である.そのなかのイエーナ東方のCaaschwitz採石場に写真のZechstein層の好露頭がある.周辺には日本人にも馴染みの深い地名が散在する.例えば,アイゼナハはバッハ生誕地として,ワイマールはゲーテの長期居住地,バウハウス校の発祥地,また憲法で知られる.ほかにはイエーナは多くの地質学者が世話になった光学機器のツァイス社創業地,などなど.南ドイツから続く起伏ある地形もここまでで,北側には低い丘陵地と単調な平野のみが北海・バルト海岸まで延々と広がる.

(写真・解説:磯﨑行雄)

© 2021 公益社団法人 東京地学協会
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