地学雑誌
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積雪学の理論的発展過程と今後の問題
吉田 順五
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1964 年 73 巻 1 号 p. 56-61

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抄録

積雪の理学的研究は, 現在, まだ初期の段階にとどまっていると云うほかあるまい。このように積雪の理学的研究がおくれたのは, 物理学者は積雪を地学の研究対象であると考え, 地学関係の学者は物理学者が研究すべきものだと考えたため, 結局, 両方の学問の境界におき忘れられたことによると云う人がある。理由は, ほかにもいろいろあろうが, いずれにしろ, 積雪が従来の学問分野の境界領域に属することにまちがいない。しかし今は, 地学者のうちにも物理学老のうちにも, 多くの数とは決していえないが, 積雪の研究にたずさわるひとびとがいる。前者の例としては, ソ連のシュームスキーをあげるのが適当であろう。シュームスキーは1955年に出版した著書「氷組織学原論」で, 積雪を堆積岩とみなし, 岩石学の立場から積雪の性質, 変態過程, また積雪が地学においてもつ意味をくわしく論じた。積雪を構成する氷は, ほかの多くの鉱物にくらべると, いちじるしく融解点の低い鉱物である。その意味で, 積雪という岩石におこる現象には一般の岩石の高温での性情を推定するうえで参考になる点が多々あるようである。しかし筆者は, 物理の出身なので, この「地学雑誌」に紹介できるほどには, シゴームスキーの仕事を理解していない。それで, 以下には, 物理学の立場からおこなわれた積雪の研究結果の一端をのべようと思う。

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