地学雑誌
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北極探険家としてのノルデンショルド
シット ヴァルテル三上 岳彦
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1981 年 90 巻 2 号 p. 54-61

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抄録

ノルデンショルドは, 1858年から1883年までの25年間に, 10回に及ぶ極地探険を成し遂げた。最初の2回のスピッツベルゲン調査探険は, 科学的極地探険の創始者オットー・トレルの指揮のもとに行なわれ, その後のスウェーデン極地探険の基礎を築いた。
1868年の探険を機に, ノルデンショルドは世界的にその名を知られるようになつた。この探険では科学的にも大きな成果をあげたが, これによって彼はスウェーデン探険隊による北極点到達を雄信するようになった。1870年, 1872年の2回にわたり, グリーンランド・スピッツベルゲンへの短い調査の後, 1872年から1873年にかけて, スピッツベルゲン北岸に沿う冬季の探険に挑み, 初の北極氷床横断に成功した。
この頃からノルデンショルドの関心は次第に北東航路へと向けられ, 1875年と1876年には小さな船でシベリア沿岸沿いにエニセイまで到達した。1878年6月, ノルデンショルドの一行を乗せたヴェガ号はスウェーデンを出航して, ユーラシア大陸周航の途についた。しかし, 2カ月後にはレナ河口付近で厚い氷に行く手を阻まれ, 翌年の7月まで越冬を余儀なくされた。解氷後わずか2日でベーリング海峡を通過したヴェガ号は, ここに初の北東航路周航に成功したのである。
1883年, ノルデンショルドによる最後の極地探険がグリーンランドの西部を中心に行なわれた広大な氷床の旅で, 探険隊の一部は標高2, 000mの地点にまで到達した。彼自身が事前に確信していた内陸の無氷域は発見できなかったが, 数多くの地学的成果が得られた。
ノルデンショルドの偉業が, その後のスウェーデンにおける極地研究に多大の貢献をなしたことは言うまでもないことである。

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