地学雑誌
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高緯度地域におけるリモートセンシング
スウェーデンを例にして
ホッペ グンナー岩田 修二
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1981 年 90 巻 2 号 p. 85-92

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抄録

せまい地域から地球的規模までの自然の理解や環境悪化の監視のための重要な方法であるリモートセンシング技術の最近の発展はたいへんめざましい。この技術がもっとも有効に利用されているのは低緯度地域においてであるが, 高緯度地域においても有効な技術であることはいうまでもない。
米・ソの二大国が主導的な位置をしめるリモートセンシングの技術開発のなかにあって, スウェーデンは, ハッセルブラッドのカメラシステムとAGA赤外テレビシステムの開発という2つの重要な貢献をしている。
スウェーデンにおける空中写真の利用は80年前に始まり, 氷河調査, 地形図・土地利用図の作製, 森林管理, 地形・地質の調査などに役立つてきた。空中写真利用の最近の興味深い例には, 北西スウェーデン山岳地域の開発計画のための組織的な空中写真判読作業や, 赤外カラー写真を利用した沿岸地域における海底地形図の作製, 森林帯における樹木の活性度の判定がある。空中写真の情報を数値化する試みも古くからおこなわれ, いくつかの映像読みとりシステムが開発された。また, 可視光と近赤外以外の波長域をカバーする装置も開発された。1973年には, リモートセンシング5力年計画として以下のものがとりあげられた。各種のセンサーを用いる全天候型のオイルもれ検知システム, 各国との協力で多様な方法を用いる海氷探知計画, マルチスペクトルスキャナーを用いた完全自動植生図化作業, レーザーを用いたばい煙検知システム。
スウェーデンは人工衛星によるリモートセンシングにも古くから関心をもっていた。気象衛星の利用, ランドサットの映像の地質調査への応用などに始まって, 最近ではマルチスペクトルデーターを森林管理のために利用するためのコンピューターシステムが開発された。さらに, 土地利用地図のための自動図化装置の開発, バルチック海の生態系の解明のための技術開発などがおこなわれている。最近の重要な前進は, スウェーデン北部に衛星受信基地の建設が決定されたことである。あらたに始まろうとしている第二次5力年計画では, 将来打ちあげられる人工衛星からの情報の高度な利用が計画されている。なかでも, 1984年にフランスから打ちあげられる予定の衛星に対しては, スウェーデンも費用を負担しており, 高度な利用が期待されている。

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