2016 年 11 巻 3 号 p. 283-293
筆者らは応力より直接的に液状化を支配する物理量として損失エネルギーに着目し,それと関連付けた累積ひずみエネルギーを地震波動エネルギーと比較することにより簡便に液状化判定できる手法を前論文で提示した。またこのエネルギー法をモデル地盤や既往液状化事例に適用し,周期や継続時間などが異なる地震動について従来の応力法(FL法)よりも適切に評価できる可能性を示した。本エネルギー法では,上昇波動エネルギーを算定しそれを地盤各層の液状化エネルギー容量と直接対比する点がこれまでにない特徴である。本補遺では,前論文で十分には触れなかった波動エネルギーの算定と損失エネルギーとの対比の理論的根拠,室内載荷試験との関連を整理し,判定の簡素化のために組み入れた近似の考え方について述べる。さらにFL法との判定結果の乖離が大きかった液状化事例を再び取り上げ,エネルギー法に組み込んだ近似がもたらす影響について検討を加える。