2024 年 19 巻 1 号 p. 17-32
記録的大雨に伴う堤防決壊が頻発化する近年,粘り強い堤防が求められている。筆者らは,堤防裏法面に破砕貝殻層を敷設することで,キャピラリーバリア(CB)土層として裏法面への雨水浸透抑制と,越水時の裏法面の侵食抑制が可能な貝殻型 CB 堤防を提案してきた。本研究では貝殻型 CB 堤防の社会実装を目指し,堤防裏法面の CB 機能に関する検証と妥当性確認を目的とする。貝殻型 CB 堤防を屋外に構築し,雨量計と堤防内の土壌水分センサによる雨水浸透の計測を約 1 年3 か月継続した。その結果,CB 土層の雨水浸透抑制機能に加え,ブレークスルー後でも浸透水の多くが高透水性の破砕貝殻層を伝って法尻方向に排水されていく排水機能も併せ持つことも確認された。また,ブレークスルーが生じてもしばらくすると回復したことが繰り返し確認され,CB 機能等が供用中の長期間に渡り継続していくことが検証できた。