抄録
性能規定型設計の導入を見据え,杭基礎に関しても変形性能の照査を検討する必要が生じつつある。しかし杭基礎の場合は,複雑な杭~地盤~杭の相互作用に未解明な部分が多く,特に長期沈下挙動について体系的な研究が行われた例が少ない。本論文では,杭間隔が杭基礎の長期沈下挙動に与える影響を定量的に解明することを目的に,土-水連成弾塑性有限要素解析を行い,以下の3項目を検証した;(1) 同載荷重下では,杭間隔が小さくなるほど,周面摩擦力の減少と杭先端応力の重合が生じ,沈下量が増大する。;(2) 杭間隔が小さくなるほど,杭に囲まれた土要素の変形が抑制されるため,内側の杭は十分な摩擦力を得られない。結果として内側の杭に割り当てられるべき荷重が外側の杭に割り当てられ,内側の杭よりも外側の杭が負担する荷重が大きくなる。さらに,その荷重を支持するため,外側の杭外縁部の土要素には大きなせん断応力が生じる;(3) 内側の杭先端部では,過剰間隙水圧が周囲よりも長く停留する。