2011 年 6 巻 2 号 p. 341-350
本研究ではバイオミネラルの中でも,セメント物質として骨や歯の主要な構成成分であるリン酸カルシウム化合物に着目し,新たな地盤注入材を開発することを目的として,リン酸カルシウム化合物析出の最適条件の検討,リン酸カルシウム化合物と豊浦砂を用いて作製した供試体の一軸圧縮試験を行った。2種類のリン酸溶液および2種類のカルシウム溶液を用いて実施した析出試験では,pHが弱酸性から中性付近へ向けて上昇するのに伴い析出体積が増加する傾向が認められた。豊浦砂とリン酸カルシウム化合物によって作製した供試体の一軸圧縮強さは,最大で87.6 kPaに達した。本研究の結果は,リン酸カルシウム化合物を地盤注入材に用いて,自己硬化性を利用したケミカルグラウトおよび析出体積のpH依存性を利用したバイオグラウトという,2つの新しい地盤注入材の可能性を示した。