大原ダムは堤体が老朽化により断面不足や漏水により耐震性が不足していたため,耐震補強と漏水防止のための改修を行った事例である。大原ダムでは,ダムサイト付近で入手可能な築堤土による堤体改修法は,斜面勾配を既設堤体よりも緩くする必要から,大量の築堤土が必要となるだけでなく貯水容量の減少も著しく現実的な改修が不可能であったため,貯水池内に堆積した底泥土を築堤土に利用できる砕・転圧盛土工法が採用された。本稿では大原ダムにおける耐震補強と漏水防止のための砕・転圧盛土工法による堤体ゾーニングと,それを築造するための設計・施工法について述べる。大原ダムは貯水量の減少を防ぐために改修後の堤体を既設堤体内に入るようにゾーニングした。また,池内の底泥土に既設堤体などからの掘削土を加えた混合泥土を砕・転圧盛土工法に利用したことで,工事発生土の場外処分を無くすと同時に底泥土を約26,000m3除去し,結果として貯水量を約30,000m3増加させることができた。