2012 年 7 巻 3 号 p. 491-501
リン酸カルシウム化合物(CPC)を用いた新しいグラウトによる改良地盤の強度を向上させることを目的として,CPCケミカルグラウト(CPC-Chem)に4種類の粉末を種結晶として添加し,作製した砂供試体の一軸圧縮強さの測定を実施した。また,それらの供試体を用いて,走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を行った。CPC-Chemにリン酸三カルシウム粉末あるいは炭酸カルシウム粉末を添加して用いた場合には,砂供試体の一軸圧縮強さが顕著に増加し,それぞれ最大で261.4kPa,209.7kPaに達した。一方で,CPC-Chemを加えずに砂質量の10%の粉末のみを添加した場合は,脱イオン水の添加のみの一軸圧縮強さ(10.0kPa)と同程度に留まった。SEM観察からは,リン酸三カルシウム1%および5%添加,あるいは炭酸カルシウム1%添加の供試体において,多孔状あるいは網状の三次元的な構造が砂粒子表面上および粒子間において観察された。しかし,リン酸マグネシウムあるいは炭酸マグネシウムを添加した供試体では,それらの明瞭な構造は観察されなかった。本研究の結果は,CPC-Chemによる地盤改良材の飛躍的な性能向上に粉末の添加,特にリン酸三カルシウムならびに炭酸カルシウムの添加が有効であることを示している。