日本老年療法学会誌
Online ISSN : 2436-908X
総説
認知症と生活リズム
久米 裕
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2023 年 2 巻 p. 1-6

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抄録

睡眠,食事,仕事,余暇活動を含む一日を通した生活リズムを整えることは,人の健康を保つために周知の事実である。認知症高齢者に観察される夜間せん妄や徘徊などの不穏行動には,生活リズムの障害が背景にあると指摘されており,毎日の生活にリズムをもたせ,そのリズムに沿って休息をとり活動することは,認知症の行動・心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia, BPSD)を軽減させるのみならず,心身の健康を維持または改善するために重要である。しかしながら,日々の活動や休息を自力では管理が難しい認知症高齢者に対して,周囲が認知症における生活リズムの特徴を捉えて支援しなければならない。近年のInformation and Communication Technology(ICT)が応用されたウェアラブル技術は,認知症の生活リズムをより定量的に把握する上で有用であることがわかってきた。特に,腕時計型ウェアラブル端末Actigraphを応用した国内外の研究知見は,認知症における休息・活動リズム(Rest-Activity Rhythm)の特徴を明らかにしている。認知症の生活リズムを適切に理解することによって,専門職による治療的介入の発展につながるだけでなく,対象者本人とその関係者の健康を保つ一助となることを期待する。

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© 2023 一般社団法人 日本老年療法学会
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