日本老年療法学会誌
Online ISSN : 2436-908X
原著
高齢者に対する動物介在療法における効果と医療従事者に関連したその考察
龍 由季乃 秋山 順子太田 光明
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2024 年 3 巻 論文ID: 2024_001_OA

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抄録

目的:動物介在療法(Animal assisted therapy: AAT)は対象者のストレス緩和効果が認められている。本研究は,高齢者に対し犬を用いたAATを実施し,対象者への効果と介在動物および医療従事者への影響を見出すことを目的とした。方法:入院患者および施設入居高齢者と活動に参加する介在犬を対象とした。対象者および介在犬の活動前後の唾液から,オキシトシンとコルチゾールを抽出した。また,活動中の参加者の発言を記録した。活動前後には各施設の医療従事者とハンドラー等との間でカンファレンスが行われ,その内容と発言を記録した。結果:高齢者延べ37人分のサンプルから,高齢者の唾液中オキシトシン値は活動後に有意に上昇し(P<0.001),コルチゾール値は有意な変化は示さなかった(P=0.64)。また介在犬延べ80頭分のサンプルから,介在犬の唾液中オキシトシン値およびコルチゾール値は活動後に有意に変化した(P<0.001)。カンファレンスでは医療従事者とハンドラーらとの間で対象者や活動内容に関する情報共有がなされた。結論:生理活性物質の変化から,AATによる高齢者ならびに介在犬へのストレス緩和効果が示された。また,医療従事者を含むカンファレンスが,対象者にとってより効果的な活動に必要であることを示唆した。本結果がAAT導入の契機となることを期する。

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© 2024 一般社団法人 日本老年療法学会
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