2025 年 4 巻 論文ID: 2025_001_RA
高齢期における転倒は,骨折や要介護・要支援など,身体的な機能低下の原因として広く認識されているが,そのような重篤な転倒でなくとも,高齢者の心理的側面に影響を与えることが少なくない。転倒関連の心理状態の一つである転倒恐怖感は,身体的な不活動を引き起こし,それに伴う身体機能低下から転倒リスクを高めるという悪循環を生じさせる重要な要因である。しかし,日本では未だ十分に認識されていないのが現状である。本稿では,転倒恐怖感について転倒自己効力感との違いを明確にしながら概説するとともに,臨床場面での応用可能性,同領域における最新の研究動向を紹介する。