本研究では, 精神的ストレスが立位における体幹動揺および自律神経機能へ及ぼす影響について検証した.
対象は健常成人男性16名とした. 精神的作業負荷として文字の意味と色が一致しない文字列を音読するストループ課題 (ST) を, コントロール課題としてモノクロ文字列の音読を実施した. 測定項目は, 課題に対する主観的評価 (VAS), 背部2箇所 (第1・2胸椎部, 第11・12胸椎部) の振動, 耳朶脈波とした. 脈波の周波数解析から低周波数成分を高周波数成分で除した値 (LF/HF 値) を自律神経機能として分析に用いた.
心理的ストレスおよび疲労感のVASは, ST後でコントロール課題後と比べて有意に高値を示した (P<0.05). 第1・2胸椎部の動揺およびLF/HF値は, ST中で試行の前後と比べて有意に高値を示した (P<0.01). 精神的ストレスにより上部体幹の動揺とLF/HF値が高まることから, 精神的ストレスは交感神経活動亢進を伴って筋緊張を亢進させると示唆された.