2018 年 14 巻 1 号 p. 2-16
健康行動を促進する心理社会的要因の因果関係モデルを構築することを目的として首都圏在住の中年,前期高齢者世代を対象にインターネット調査を実施し,1,240名を分析対象とした.健康行動の関連要因として抽出された,「水平的繋がり」,「ソーシャルサポート」,「認知的ソーシャル・キャピタル:SC」,「健康観」,「首尾一貫感覚:SOC」の構成概念を潜在変数とした共分散構造分析により,因果関係モデルを作成した結果,健康行動を直接的に促進する要因は,すべての年代・性別において,自分が健康であると感じ自身で健康をコントロールできると考える健康観であり,中年世代に比べ高齢世代で健康行動に強く影響した.高齢女性では水平的繋がりも直接的に健康行動に影響した.健康行動の間接的促進要因として,すべての年代・性別でSOCの高まりが健康観を高め,健康行動を促進した.また認知的SCは,中年女性及び高齢男性では健康観,高齢女性では水平的繋がりに影響し,健康行動を間接的に促進した.健康行動を促進するには健康観を高める要因であるSOCの強化が有効であり,さらに,高齢期に向けて男性に対しては認知的SCの強化に寄与する働きかけ,女性に対しては水平的繋がりの促進に向けた支援が有効であることが示唆された.