健常男性14名を対象に2つの実験を行い,下腿前面への軽擦が心身に及ぼす影響を軽擦速度との関連で検討した.単軽擦実験では,異なる速度条件(0.3,3,30cm/s)で下腿前面に1回の軽擦を行った.軽擦直後の快不快評価を条件間で比較したところ,求心性触覚C線維の活性化に最適速度範囲にある3cm/sが最も快と評価された.繰返し軽擦実験では,マッサージを模して下腿前面を20分間軽擦し,2条件(0.6,3cm/s)で比較した.気分評価を軽擦前後で比較したところ,両条件ともに「緊張−不安」が有意に減少した.心拍数も,両条件ともに刺激開始後に有意に減少したが,条件間に違いはみられなかった.一方,3cm/sにおいてのみ,快と評価されるほど心拍数の減少が大きくなった.以上のことから,下腿前面への軽擦による快評価と心拍数減少との相関に軽擦速度が関連することが示唆され,求心性触覚C線維が関わっている可能性が議論された.