心身健康科学
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原著論文
看護学生のEQ(Emotional Intelligence Quotient)の検討
松本 幸子小岩 信義久住 武
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2010 年 6 巻 1 号 p. 1_39-1_45

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抄録

看護学校に在籍する学生(看護学生)が看護教育を受ける中でつまずく要因には,看護学等の基礎学力の問題だけではなく,患者を中心とした周囲の人々の気持ちを理解する等のコミュニケーション能力の低下が存在すると考えられる.そこには知能指数,すなわちIQ(Intelligence Quotient)に加えて,ダニエル・ゴールマンが提唱したEQ(Emotional Intelligence Quotient,感情知能指数)も関係していると考えられる.そこで本研究では看護学生のEQを調査し,看護教育のあり方について検討した.
EQの調査は,A専門学校の看護学生281名を対象に,高山簡易版EQテストを用いて質問紙によりアンケートを行った.EQを構成する4つの要素(感情の「識別」,「利用」,「理解」,「調整」能力)それぞれの得点(各要素:6~30点)と4つの構成要素の得点を合算したEQ合計得点(24~120点)について検討した.
EQ合計得点は学年別でみると,新入生がもっとも高く,次いで3年生,1年生と続き,2年生が最も低かった.学年枠をはずして年齢とEQ合計得点との関係を検討したところ,両者の間に関連性は認められなかった.また,EQの4つの構成要素の得点を比較すると,各学年とも「識別」が最大で「利用」が最小値で,「識別」と「利用」の値の間には有意の差を認めた.EQの各構成要素の値の間には強い正の相関関係を認めた (r=0.63~0.83).EQ合計得点と4つの構成要素の関係では,「利用」が最も強い関連性を示した (r=0.89).
以上のことから,看護学生のEQを高めるには,合計得点が最も低かった2年生への教育,さらに各学年とも低値を示した感情の「利用」を高めるような教育が必要になると考えられる.また,EQの各構成要素間の相関が高いことや,各構成要素とEQ合計得点との間に強い相関を認めたことから,看護学生が自らの得意とする感情の要素を学習することで他のEQの要素と総合的なEQを高めることが可能であると考える.

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© 2010 日本心身健康科学会
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