笑いは心と身体の健康の原点であり,人には社会的な生き物として笑顔が重要である.
パーキンソン病(Parkinson's disease:PD)患者は大脳基底核を中心とする皮質下運動系で錐体外路系の障害のため,ユーモアなどに反応した自発的な陽気な笑いを失っており,障害されていない錐体路系によるポーズの笑いのみ可能といわれている.本研究の目的は,仮面様顔貌のPD患者に自然な笑顔の回復を図ることであった.対象者は大学病院脳神経内科外来患者で,表情筋トレーニングとプラス思考トレーニングから構成したトレーニングメニューで実施した.プラス思考の項目は笑顔を引き出す内容を考えて筆者が作成した.トレーニング効果の評価はコンピューターによる笑顔の全体の表情,行動指標による表情評価,顔画像の座標値解析と3つの観点から総合的に評価した.両プランによって体性入力と心的入力が統合する環境を作り出し,自然な笑顔の回復を図ることができた.