心身健康科学
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原著論文
fMRI-BOLD法による異なる末梢刺激による非疼痛者と慢性疼痛患者の脳機能活動
大勝 孝雄久住 武新井 康允新原 正文大勝 洋祐
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2011 年 7 巻 1 号 p. 34-48

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抄録
機能的磁気共鳴画像(fMRI)は,脳の局所神経活動変化を非侵襲的に捉える脳機能イメージング法であり,疼痛脳内機構に関する様々な知見をもたらしている.疼痛脳内機構は,侵害刺激のみならず,痛みのイメージなど感情面に関する要素でも活性化されることが報告されている.本研究では,鍼刺激・プラスチック管刺激の定量評価を非疼痛(健常)者と慢性疼痛患者に対しfMRIで実施し,興味ある脳機能賦活部位を確認した.非疼痛(健常)者12例と慢性疼痛患者6例(疼痛群)に対して右側手背側の母指と示指中間の皮膚のポイントに,徒手による鍼刺激およびプラスチック管刺激を行い,fMRI-BOLD法で調べた.鍼刺激による2群間のBOLD信号変化量の比較をすると,疼痛群が非疼痛(健常)群に比べ有意に高値であった.2群間の脳賦活部位の比較では,疼痛群では両側中前頭回,右側下前頭回,左側中心後回,両側下頭頂小葉,右側縁上回,右側上側頭回,右側中側頭回,左側前帯状回,両側小脳,左側島皮質,大脳基底核(両側レンズ核,左側尾状核),左側側脳室で賦活が有意に認められ,非疼痛(健常)群では右側縁上回,左側角回,左側小脳で賦活が有意に認められた.プラスチック管刺激については,非疼痛(健常)群で3例について行い,3例全てで無反応であった.一方,疼痛群は2例についてプラスチック管刺激を行ったが脳賦活部位が広範囲に認められ,しかも反応は高かった.非疼痛(健常)群ではプラスチック管刺激をしてもBOLD信号がほとんど認められず,効果がなかったと考えられるので,疼痛群でも非疼痛(健常)群同様,プラスチック管刺激は効果がないとすると,プラスチック管刺激の場合の脳賦活画像は疼痛のみによる脳賦活反応と考えられる.したがって,鍼刺激が疼痛関連メカニズムの賦活パターンをどれ位変化させるかが鍼刺激の効果を考える上で問題となる.
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© 2011 日本心身健康科学会
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