2021 年 22 巻 1 号 p. 58-64
歯科診療所の高齢(60~84歳)の初診患者の現在歯数および歯周病重症者率について,過去20年間の推移を調査した.対象は,日本ヘルスケア歯科学会の会員が代表者を務める全国19の歯科診療所の2000年1月から2019年12月までの初診患者で,初診時60~84歳,年齢,性別,初診年月,生年月の基本情報が整い,入力記録に明らかなエラーの認められなかった12,129件(男性4,830件,女性7,299件)である.初診患者を60歳から84歳まで5歳ごとの5ユニットに分け,2000~2019年を5年刻みの4群に分けて,現在歯数および歯周病重症者率(重度に進行した歯周病を有する人の割合)の経時的な推移を評価した.その結果,男性の60~64歳ユニットを除いてすべての年齢ユニットで2000~2004年の初診患者に比較して2015~2019年調査群の初診患者の現在歯数は有意に増加していた.とくに女性の65~69歳のユニットでは,2000~2004年調査群の初診患者に比較してすべての調査年群で現在歯数の有意な増加が認められた.男性でも70~74歳,75~79歳のユニットでは2000~2004年調査群の初診患者に比較して2010年以降の群で有意な増加が認められた.歯周病の重症者の割合は,男女とも60~64歳で減少し,75歳以上の女性では大幅に減少し,2015~2019年調査群では全年齢ユニットで女性の重症者率が男性より5%以上少ないことが明らかになった.