日本ヘルスケア歯科学会誌
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22 巻, 1 号
日本ヘルスケア歯科学会誌
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
総説
  • 歯科医院で救える命がある
    柴原 孝彦
    2021 年 22 巻 1 号 p. 6-19
    発行日: 2021/12/28
    公開日: 2022/03/23
    ジャーナル オープンアクセス
    口腔がんは希少がんだが,60代男性を中心に増加傾向にある.また最近では女性,若年者の罹患も増えている.口腔は歯科医療従事者だけでなく,患者自身が見て,触れることができるにもかかわらず,現実には口腔がんの早期発見は難しいため,患者の35.8%は基幹病院に紹介されたときには進行がん(ステージ3,4)となっている. 口腔がんに対して,国民の認知度向上,そして歯科医療従事者の意識改革が必要である.本稿では口腔がんの日本の現状,過去との相違を示すとともに,新たな口腔がん対策を紹介する.すなわち口腔がん検診活動の普及,蛍光観察による早期発見トライアル,そしてオーラルナビシステムの導入である.
  • 山下 喜久
    2021 年 22 巻 1 号 p. 20-26
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/23
    ジャーナル オープンアクセス
    唾液中には口腔の様々なニッチ(隙間)に由来する細菌種が検出される.歯周ポケットもそのニッチの一つであり,歯周病の進行に伴い,増殖した歯周ポケット特異細菌が唾液中に増加することが考えられる.このような仮説に立ち,唾液を検体として11細菌種からなる歯周ポケット特異細菌の唾液細菌叢中の比率と歯周病との関係を次世代シーケンサーによる解析結果に基づき調べた.その結果,歯周ポケット特異細菌の唾液細菌叢中の比率のカットオフ値を0.139%とすることで,深さ4mm以上の歯周ポケットが10~15部位以上ある歯周病患者を感度0.88,特異度0.7程度で検出できた.これまで,歯周病患者を集団検診の場でスクリーニングする際には,歯周プローブで歯周ポケットの深さを手間と時間を掛けて診査する必要があったが,以上の結果から,従来の歯周病検査に代わって唾液を検体とした細菌検査が歯周病患者の新たなスクリーニング法になることが期待される.
  • 今日までに得られたもっとも信頼できる科学的根拠に基づくう蝕予防のための公衆衛生手段
    田浦 勝彦
    2021 年 22 巻 1 号 p. 27-39
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/23
    ジャーナル オープンアクセス
    地域水道水フロリデーションは飲料水中に含まれるフッ化物をう蝕予防に至適な濃度となるように管理調整することである.多くのシステマティックレビューと個別の研究から,推奨濃度のフッ化物レベルでのフロリデーション水の摂取は安全であることが示されている.フロリデーションは科学的根拠に基づいた安全,効果,費用節減,社会的に公正な公衆衛生手段であり,年齢,教育,所得水準,歯科医療への定期的な通院に係わらず,すべての地域住民を対象にする.さらに,地域に存在する健康格差を解消する強力な公共政策として導入の意義は大きい.すべての保健当局,医療専門家,および関係する市民が,う蝕予防に必要なフッ化物含有量に満たないすべての地域で地域水道水フロリデーションを達成する仕事に参加することが期待される.
  • 足本 敦, Jørgen SLOTS
    2021 年 22 巻 1 号 p. 40-45
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/23
    ジャーナル オープンアクセス
    Polymerase Chain Reaction(PCR)法の開発によりヘルペスウイルスと歯周炎の関与についての研究には顕著な発展が見られた.重度歯周炎の病因には,活動性ヘルペスウイルス,特定の病原性細菌および破壊的な免疫応答が挙げられるが,ヘルペスウイルスが主な病原性決定因子と推測することができる.歯周ヘルペスウイルスは,全身循環系に入り込み,さまざまな臓器において疾患の発症に影響を及ぼす可能性がある.ヘルペスウイルスと病原性細菌の両者を標的とする歯周治療は,長期の臨床的改善をもたらし,全身性疾患のリスクを潜在的に減らすことができると考えられる. この論文は,ヘルペスウイルスの基本的な特徴,およびヘルペスウイルスと細菌の重複感染と歯周炎との関係を明らかにする.歯周ヘルペスウイルスに関する知識は歯周病学の科学と実践における転換点となるだろう.
原著
  • 加藤 智崇, 藤原 夏樹, 福田 雅臣, 小川 智久, 沼部 幸博
    2021 年 22 巻 1 号 p. 46-51
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/23
    ジャーナル オープンアクセス
    背景:2020年,全世界で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大防止のため“自粛生活”を強いられ,劇的な生活習慣の変化が生じた.一方で,歯科診療によるCOVID-19の感染を危惧する報道により,歯科の受診控えが懸念されている. われわれは,生活習慣の変化とCOVID-19による歯科診療の不安による歯科受診への影響を明らかにすることを目的にアンケート調査を行った. 方法:2020年10月から2020年12月の間に,ある地方都市の一般歯科医院のSPT患者に対してアンケート調査を行った.質問は,GOHAI,K6,生活習慣,健康状態,口腔の自覚症状,および歯科受診への不安について尋ねた. 結果:372名(平均年齢55.38歳,女性257名・男性115名)から回答を得た.歯科医院での感染が不安である者は20.2%,報道によって歯科診療に不安に感じた者が13.4%であった.歯科医院で感染に不安を抱く者は,不安でない者に比べ有意に口腔関連QOLが低く,うつ傾向でもあった. 考察・まとめ:歯科診療に不安を抱く者は口腔関連QOLが低い傾向があり,むしろ歯科医院の受診が必要な可能性が考えられた.
  • 藤木 省三, 千草 隆治
    2021 年 22 巻 1 号 p. 52-57
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/23
    ジャーナル オープンアクセス
    歯の喪失の主原因はう蝕およびう蝕関連疾患が高い割合を占めることが報告されており,子どものう蝕予防が重要であることは明らかである.本研究では,12歳まで継続来院をして定期的管理を受けた子どもを対象として,12歳で初めて来院した者と比較分析することで,多施設の歯科医院における子どもの定期的管理におけるう蝕予防効果を検討した.その結果,定期管理群と12歳時初診グループを比較すると,6歳からの継続受診は12歳時のう蝕を増加させない可能性が示唆され,6歳時から定期管理をすることで,かなりう蝕の発生が抑制でき,早い年齢からのう蝕管理が重要であることが明らかとなった.また,定期管理の受診間隔についても分析したところ,定期管理は少なくとも1年ごとに実施する必要があることが示唆された.さらに,6歳時点でのう蝕が多いと将来来院が途絶える可能性が高いことが推測され,6歳でのう蝕が多い場合は定期管理を行うためにより積極的な関わりが必要であることがわかった.
  • 同一診療所群の連続20年間の診療記録を用いた報告
    秋元 秀俊, 藤木 省三
    2021 年 22 巻 1 号 p. 58-64
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/23
    ジャーナル オープンアクセス
    歯科診療所の高齢(60~84歳)の初診患者の現在歯数および歯周病重症者率について,過去20年間の推移を調査した.対象は,日本ヘルスケア歯科学会の会員が代表者を務める全国19の歯科診療所の2000年1月から2019年12月までの初診患者で,初診時60~84歳,年齢,性別,初診年月,生年月の基本情報が整い,入力記録に明らかなエラーの認められなかった12,129件(男性4,830件,女性7,299件)である.初診患者を60歳から84歳まで5歳ごとの5ユニットに分け,2000~2019年を5年刻みの4群に分けて,現在歯数および歯周病重症者率(重度に進行した歯周病を有する人の割合)の経時的な推移を評価した.その結果,男性の60~64歳ユニットを除いてすべての年齢ユニットで2000~2004年の初診患者に比較して2015~2019年調査群の初診患者の現在歯数は有意に増加していた.とくに女性の65~69歳のユニットでは,2000~2004年調査群の初診患者に比較してすべての調査年群で現在歯数の有意な増加が認められた.男性でも70~74歳,75~79歳のユニットでは2000~2004年調査群の初診患者に比較して2010年以降の群で有意な増加が認められた.歯周病の重症者の割合は,男女とも60~64歳で減少し,75歳以上の女性では大幅に減少し,2015~2019年調査群では全年齢ユニットで女性の重症者率が男性より5%以上少ないことが明らかになった.
調査報告
  • 秋元 秀俊, 藤木 省三
    2021 年 22 巻 1 号 p. 65-73
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/23
    ジャーナル オープンアクセス
    この調査は,定期管理型歯科診療所の初診患者の経年的動向を知ることを目的に,日本ヘルスケア歯科学会の会員診療所(主に認証診療所)において日常的に記録されている資料を収集して,その初診患者の特徴を分析したものである.この第14次調査は,57診療所(25都道府県)の1年間(2019年1月1日から12月31日)の匿名化された初診患者(生年月日と性別の記載がある患者総数13,849人,男性5,870人,女性7,979人)の口腔内の記録を集計・分析したものである.会員診療所のうち原則として初診患者全員の口腔内記録がデジタル化されたデータとして提出可能で,6歳以上の小児について1人平均DMF歯数(以下,DMFT指数),成人についてはDMFT指数のほか,残存歯数,歯周病進行度,喫煙経験の記録のある会員に協力を要請し,その記録を集計した.その結果,前回調査に引き続き12歳以上の年齢(階層)別DMFT指数の低下,若年層男性の非喫煙者率の増加が認められた.また男女とも高齢者の現在歯数の増加が認められた.
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