目的:チーム医療のパフォーマンス促進を目的として、医療従事者を対象にしたチームビルディング(TB)アプローチが関心を集めている。とりわけTBが看護師の肯定的な協同作業認識を醸成するならば、チーム医療への貢献は甚大である。しかしながら、TBは実践的アプローチの性格が強く、先行研究において介入効果のエビデンスを示したものは少ない。そこで本研究は、TBプログラムに基づく2日間の宿泊型看護師研修会を開催し、介入前後の協同作業認識得点の比較を行うことでTBの有効性を検討することを目的とした。
対象と方法:首都圏の大学病院に勤務する40名(男性6名, 女性34名)の看護師を本研究の対象とした。いずれも宿泊型看護研修の参加を希望し、調査協力の同意が得られた者である。アウトカム測定は協同効用、 個人志向、 互恵懸念という3つの下位尺度を持つ協同作業認識尺度によって行った。
結果:本研究のデータでは、プレテストよりもポストテストの協同効用得点が高く、個人志向得点と互恵懸念得点は低い値を示した(t検定,両側, p<.001)。ポストテストにおける協同効用得点と互恵懸念得点の非正規性が疑われたことから、Wilcoxonの符号付き順位検定も行ったが、t検定と同様にいずれも1%の危険率で帰無仮説を棄却した(p<.001)。
結論:本研究の結果は、看護師の肯定的な協同作業認識を促進する上でTBが有効なアプローチとなる可能性を示唆した。この結果は、将来的にエビデンスに基づく実践的なTBを展開していく上で重要な基礎資料になると考えられる。