医療看護研究
Online ISSN : 2758-5123
Print ISSN : 1349-8630
最新号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
特別寄稿
原著
  • 西岡 由香里, 岡本 明美
    原稿種別: 原  著
    2024 年 20 巻 2 号 p. 14-23
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/03
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、意思決定することが難しい高齢がん患者の代理意思決定をする家族へのがん看護専門看護師による支援の構造を明らかにし、看護師に求められる実践能力について考察することである。高齢がん患者の家族への代理意思決定支援を行った経験のあるがん看護専門看護師8名を対象に半構造化面接によりデータを収集した。分析方法は質的帰納的分析である。

     代理意思決定をする家族への支援は、《家族の背負っている負担を少しでも軽くする》、《高齢がん患者の意思を反映した決定を目指す》、《代理意思決定を遂行できる家族員を明確にする》、《家族に代理意思決定をする覚悟を決めてもらう》の4コアカテゴリーに集約され、《高齢がん患者の意思を反映した決定を目指す》、《家族の背負っている負担を少しでも軽くする》の2つを目標に相互に関連しながら代理意思決定が想定される前から代理意思決定後まで支援を継続していることが考えられた。看護師に求められる実践能力として、家族に寄り添う力、アセスメントする力、多職種との関係性を構築する力、高齢がん患者の意思を尊重し家族の負担を軽減することを意識する力が示唆された。

  • 本間 誠淳, 倉田 慶子
    原稿種別: 原  著
    2024 年 20 巻 2 号 p. 24-32
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/03
    ジャーナル フリー

    目的:医療的ケアが必要な重症心身障害児(以下、重症児)の父親の就学時における子育てプロセスを明らかにすることである。

    方法:首都圏を中心に重症児の父親13名に、就学時の経験について半構造化インタビューを実施した。インタビュー内容は修正版グランデッド・セオリー・アプローチを基に分析した。

    結果:重症児の父親は【就学の課題を自分事として向き合(う)】い始めると、その時々の【子どもと家族を取り巻く状況を見極め(る)】、【子どもと家族の生活環境を整えるために行動(する)】し、行動の結果に対して【就学についてさまざまな思いを抱く】。また、母親や他の重症児の父親、専門職などと関わり影響し合うことで、【就学時の子育てを支えられている】。そして就学を通して、新たな課題が生じる度に父親はこのプロセスを踏み、経験を積み重ねている。

    考察:就学時に重症児の父親は俯瞰的に自分自身や家族、社会という子どもと家族を取り巻く状況を見極めていた。また、就労と育児の両立に葛藤し、家庭での父親役割を模索しながら、子どもと家族の生活を維持し、子どもが就学するための環境を整えるために行動をしていたと考える。

  • 北村 幸恵, 佐藤 まゆみ
    原稿種別: 原  著
    2024 年 20 巻 2 号 p. 33-43
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/03
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、心臓再同期療法(以下CRT療法)や呼吸補助療法(以下CPAP療法)をうけている慢性心不全患者の療養生活上のニーズを明らかにすることである。CRT/CPAP療法を半年以上受け、研究参加に同意が得られた外来通院中の慢性心不全患者に半構造化面接調査を実施し質的記述的に分析した。研究対象者は20名で男性13名、平均年齢72.4歳、CRT療法10名、CPAP療法8名、CRT/CPAP療法2名であった。分析の結果、CRT/CPAP療法をうけている慢性心不全患者の療養生活上のニーズは13のカテゴリに集約されたが、そのうち【CRT/CPAP療法に伴う身体的苦痛が辛い】【CRT/CPAP療法の治療の目的や効果が分からない】【CRT/CPAP療法後の社会資源・就労の情報がほしい】【CPAP療法を実践するがマスク装着が難しい】【CRT療法に伴う制限や外見変化にストレスを自覚する】はCRT/CPAP療法をうける患者特有の療養生活ニーズと考えられた。これらの結果から、CRT/CPAP療法をうける慢性心不全患者は、CRT/CPAP療法に伴う肩痛や口渇による苦痛、高度機器を用いた治療の理解や実施の困難、社会資源や就労に関する情報の獲得困難、治療における制限や外見変化へのストレスを抱えることが明らかになった。外来の看護支援にあたっては、共通するニーズに加えこれら特有のニーズを理解して適切な援助を行う必要がある。

  • 江 秀杰, 野崎 真奈美
    原稿種別: 原  著
    2024 年 20 巻 2 号 p. 44-54
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/03
    ジャーナル フリー

    目的:本研究は、日本人先輩看護師が在日中国人看護師を指導する際に抱えている困難について明らかにすることを目的とした。

    方法:在日中国人看護師を指導している日本人先輩看護師11名に半構造化面接を行い、指導する際に抱えている困難について語られた内容を質的記述的に分析した。

    結果:日本人先輩看護師が在日中国人看護師を指導する際に抱えている困難として、【在日中国人看護師に対する理解不足】【円滑なコミュニケーションの確立における苦労】【医療現場の職場文化への適応課題に対する対応策の模索】【日本の医療と看護に対する理解不足を補うための苦労】【看護過程の展開について指導しても習得に至らないことで感じる疲労感】【自立までの課題の多さに対するサポートシステムの不足】の6カテゴリーが抽出された。

    考察:日本人先輩看護師は在日中国人看護師を指導する際に、効果的なコミュニケーションを通して、在日中国人看護師のレディネスを把握したうえで、効果的な教育プランを構築することが必要であると示唆された。指導者の困難感を軽減するために、指導者に対する支援や連携を取れる相談窓口の確立が必要である。

研究報告
  • 佐藤 まゆみ, 大内 美穂子, 髙山 京子, 片岡 純, 森本 悦子, 西脇 可織, 阿部 恭子, 佐藤 禮子
    原稿種別: 研究報告
    2024 年 20 巻 2 号 p. 55-65
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/03
    ジャーナル フリー

    目的:「がん患者の主体性を育み活かす看護実践のための外来看護師育成プログラム」試行版を開発し、有用性と施設での運用可能性を明らかにする。

    方法:1)試行版プログラムの開発:プログラムの目的をがん患者の主体性を育み活かす看護実践ができる外来看護師の育成とし、学習者は、外来通院がん患者の看護に従事する看護師で、自分の所属部署での外来看護がひととおり実践できる者とした。プログラムは、5つのサブプログラム(SP)、実践力チェックリスト(CL)、2つの資料、5つの記録用紙で構成し、学習者のニードにあわせてSPを選択して学習する方式とした。2)調査方法:学習者の条件をみたすがん診療連携拠点病院の外来看護師9名とその指導者9名にプログラムを実施してもらい、実施後に両者と施設の教育担当看護管理者5名に、有用性と施設での運用可能性に関する面接調査を行った。また、実施前後のCLの点数を比較した。

    結果:1)有用性:外来看護師の評価は「着実に能力を獲得できる」等であり、指導者の評価は「育成に必要な内容は網羅されている」等であった。外来看護師が実施したのべ11のSPのうち10(90.9%)のSPでは、プログラム実施前に比べて実施後の点数が増加した。2)運用可能性:指導者と管理者の評価は「時間とマンパワーが確保できれば可能」「プログラムの実施方法をもう少し簡素化する」等であった。

     考察:試行版プログラムは、がん患者の主体性を育み活かす看護実践能力を向上させる可能性があると考えられたが、施設で運用されるためには、教育の質は維持しつつ実施方法を簡素化する必要があるといえる。

  • 八木 範子, 湯浅 美千代, 島田 広美, 杉山 智子
    原稿種別: 研究報告
    2024 年 20 巻 2 号 p. 66-76
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/03
    ジャーナル フリー

    目的:急性期病院に入院した独居の認知症高齢者に対し、病棟看護師および退院調整看護師がどのような退院支援を行っているかを明らかにし、独居の認知症高齢者本人の意向を尊重した退院支援について検討することを目的とした。

    方法:質的記述的研究デザインで実施した。急性期病院に勤務する病棟看護師4名、退院調整看護師3名に半構造化面接を行い、質的に分析した。

    結果:対象者から語られた退院支援は、【患者の意向に沿った支援】、【自宅退院の実現に向けた支援】、【退院後、安全に暮らすためのアセスメント】、【自宅退院後、安全に暮らすための支援】、【退院支援の改善に向けた活動】の5つに分けられた。

    結論:独居の認知症高齢者の意向を尊重した退院支援には、認知症高齢者の意向を引き出し、認知症高齢者を支える支援者を含めた支援や、退院後に安全に暮らせるようアセスメントを行い、退院後の支援が継続されるよう関わることが重要である。

  • 奥出 有香子, 佐藤 まゆみ
    原稿種別: 研究報告
    2024 年 20 巻 2 号 p. 77-86
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/03
    ジャーナル フリー

     【目的】がん性疼痛を有する外来患者を対象としたモバイルアプリケーション(以下アプリ)を開発し、このアプリと看護師の介入によって疼痛セルフマネジメントを高めるための看護支援プログラムを考案した。本研究の目的は、開発したアプリに関して、がん性疼痛を有する外来通院中の患者にとってのユーザビリティを明らかにすることであった。【方法】がん性疼痛があり、オピオイドを内服中の外来患者を対象にアプリを1週間使用してもらい、アプリの使いやすさなどについて5段階評価での質問紙調査を行い、平均値を算出した。また、アプリの満足度や改善点などについてインタビュー調査を行い、質的記述的に分析した。【結果】対象者9名によるユーザビリティ評価の結果は、使いやすさ:3.0、操作のわかりやすさ:3.0、構成のわかりやすさ:3.3、操作のしやすさ:4.1、短時間で使用できるか:3.6、素早い操作性:3.9、文章の読みやすさ:3.8、今後も使いたいか:2.8、満足度:40~60%、アプリ全体に対する評価:2.8であった。アプリの使用頻度は、7人は毎日、2名は週3日で痛みの増強や発熱により毎日は使用できなかった。入力内容に応じて即時にメッセージが表示される機能は下剤の内服や安心感につながった。改善点は、字の大きさの変更や内服したことをチェックできる欄の追加などであった。【考察】開発したアプリの使用は、身体状況によっては負担になるものの、効果性・効率性という点から概ね有用であると考えられた。今後文字の大きさの変更や内服記録欄の追加などの改善が必要である。

  • 板井 麻衣, 原田 静香, 仲里 良子, 櫻井 しのぶ
    原稿種別: 研究報告
    2024 年 20 巻 2 号 p. 87-95
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/03
    ジャーナル フリー

    目的:コロナ禍において地域老人クラブ活動に学生補助員として参加した看護学生の特徴と認識を明らかにすること。

    方法:看護学部4年生5名を対象とした。混合研究法を用い、自記式質問紙とインタビューから得られた量的・質的データを分析した。

    結果:ボランティア活動参加動機尺度平均点は、知識の習得、職業上での成功、利他主義の順で高く、平均点が最も低かった感情的安寧は活動後に有意な上昇が見られた(p<.05)。対象者の語りから【地域活動へのレディネス】【活動のしやすさとしづらさ】【活動参加による自身へのメリット】【対人コミュニケーション機会からの学び】【活動を運営・促進する能力の必要性】【看護的視野の広がり】の6カテゴリが明らかになった。

    考察:地域活動へのレディネスが活動によるメリットの認識や主体的に学ぶ姿勢といった好循環をもたらした。活動参加の動機は知識の習得等であったが、活動を通して対人コミュニケーション機会が拡大した結果、感情的安寧を得ていた。地域住民の主体的活動への参加を通して、与えられた役割をこなすという姿勢ではなく主体的に学ぶ姿勢で、活動を運営・推進する能力の必要性や看護的視野の広がりを認識した。

資料
  • 湯浅 美千代, 東森 由香, 島田 広美, 杉山 智子
    原稿種別: 資  料
    2024 年 20 巻 2 号 p. 96-104
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/03
    ジャーナル フリー

    目的:介護老人保健施設(以下老健)における看取りの現状と課題を横断研究により把握することを目的とした。

    方法:全国老人保健施設協会に登録している3,600施設より2,000施設を県別に層化抽出し、各施設の看護師1名に無記名自記式質問紙調査を実施した。各項目の回答者数と割合を示し、前年度の年間看取り件数が0件(Aグループ)、1~10件(Bグループ)、11件以上(Cグループ)に分けて比較した。結果:281人の回答を分析し、年間看取り件数が記載された回答257人より、Aグループ40人(15.6%)、Bグループ109人(42.4%)、Cグループ108人(42.0%)だった。全グループとも「職員教育の不足」を問題として挙げていた。Aグループは「体制の不備」を多く挙げていた。B・Cグループでは工夫点やうまくいっている点として「家族との信頼関係」を多く挙げ、自身は「職員教育」「職種間の連携や調整」「カンファレンス」に取り組んでいると回答した者が多かった。

    結論:老健における看取りに関する問題として職員教育の不足があり、職員と連携・協働する場面を通して教育する看護師の役割が重要になると考えられた。

feedback
Top