医療看護研究
Online ISSN : 2758-5123
Print ISSN : 1349-8630
論説
罪悪感と償いに関する心理学的考察
-イアン・マキューアン「贖罪」と中島京子「小さいおうち」をめぐって-
山岸 明子
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2017 年 13 巻 2 号 p. 82-90

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抄録

 親しい他者の幸福を阻んでしまったことから罪悪感に苛まれる主人公を描いた2つの小説-イアン・マキューアン「贖罪」と中島京子「小さいおうち」を取り上げて、主人公ブライオニーとタキのもった罪悪感はどのようなものか、その罪悪感に対して2人はどのような行動をとったのかについて、心理学の観点から考察を行った。どちらの主人公も傷つけた他者に焦点がある罪悪感をもったが、ブライオニーの罪悪感は「自分がやったこと」にも焦点を向けているのに対し、タキの場合は自他の行為の不均衡に基づく罪悪感-日本人にもたれやすい罪悪感が中核にあることが指摘された。2人の行為は加害の重大性等が異なるため、罪悪感の強さやとられる行為も異なったが、どちらも晩年に罪悪感に関する経緯を手記として綴っていたため、書くことの意味についても考察を行った。ブライオニーは贖罪のために否定的なことも全て誠実に書き、自分が傷つけた2人の人生を意味づけるための虚構を意図的につけ加えることで自分の人生を受容することができたのに対し、タキは否定的で嫌なことは隠蔽してしまったことで更に強い罪悪感が生じてしまい「絶望」に陥ってしまったことが示された。

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© 2017 順天堂大学医療看護学部
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