抄録
本研究の目的は、特別養護老人ホーム(特養)に勤める看護師・介護職員がノロウイルス(NV)感染症対策を実施する際に遭遇した課題を明らかにすることである。
日本全国の特養から無作為に抽出した235施設に勤務する看護師・介護福祉士、その他の介護職員各1名計705名を対象とし、NV感染症対策を実施する際に遭遇した課題の有無とその内容などについて、自由記述で回答を得た。その結果、388名から回答が得られ(回収率55.0%)、「NV感染症対策の実施経験あり」と回答した235名中、自由記述による回答があった228名(58.8%)のデータを質的記述的に分析した。自由記述から234のコードがあげられ、課題として【施設利用者の特性によるNV感染症対策実施の難しさ】、【看護師・介護職員のNV感染症対策の知識および対応力不足】、【NV感染症対策を実施するための人員不足】、【施設の構造面による隔離部屋確保の難しさ】の4カテゴリーが得られた。
施設利用者の特性をふまえて、看護師・介護職員の誰もが実践可能かつ有効なNV感染症対策の考案及び多職種職員全員に求められるエビデンスのあるNV感染症対策を確実に実施できる教育方法の開発が必要と考えられる。