抄録
目的:療養病床における認知症高齢患者へのCOVID-19の感染予防ケアの実態とケアの工夫内容を明らかにすることを本研究の目的とした。
方法:無作為抽出した全国600施設の療養病床の看護師各1名を対象に無記名自記式質問紙調査を行い、記述統計と質的分析を行った。
結果:157名から回答があり(回収率26.2%)、基本的な感染予防策の実施困難が示された。一方、面会制限を含む感染予防策の影響による認知症高齢患者の様子や症状は変化がないという回答が約30%であった。感染予防策の具体的な説明方法では、〈繰り返し説明〉、〈事実を丁寧に伝える〉、〈視覚的アプローチ〉、〈伝わりやすい言葉への言い換え〉、〈感染予防策を一緒に行う〉などが行われ、家族の面会に代わるケアの工夫では、〈コミュニケーションの機会を増やす〉、〈身体を動かす機会を作る〉、〈リラックスできる環境作り〉などのほか、家族へのケアもあげられた。
結論:認知症高齢患者に求められる基本的なケアの遂行により感染予防ケアやその影響への対処ができていると考えられた。また、面会制限は家族への影響も大きく、家族へのケアが重要であることが示唆された。