本研究の目的は,青年後期と成人期初期に同じ形式で生育史を書いてもらい,2時期に語られた過去の類似性と異質性,“過去を語ること”の安定性と変動性について実証的に検討することである。被調査者は1994年にレポート課題として生育史を書いた看護短大の卒業生の内,7年後に再度生育史を書いた35名である。2つの生育史には類似性がある一方,変化もあり,特に同じエピソードが以前よりも肯定的に語られるというような肯定化が多いこと,また否定的なものの方が入れ替わりが多く,否定的な事柄のとらえ方は肯定的な事柄に比べ,より不安定であることが示された。