2006 年 2 巻 1 号 p. 11-16
施設入所高齢者のおしゃれへの関心と動機を明らかにし,高齢者へのその人らしい生活支援の方策を検討するため研究に着手した。有料老人ホームと介護老人保健施設に入所し,会話が成立し意思表明できる65歳以上の33名を対象にした。文献検討に基づく自作質問紙を用い1人30分程度の半構成面接を行った。分析は,意味のあるひとまとまりの語句や文章をデータとして類似性により分類しカテゴリ化した。
33名中25名(76%)は,おしゃれが楽しい老後につながり生活や気分が変わると回答した。おしゃれへの関心は,化粧など特別な行為より髭剃りや整髪,肌を整えることに意識が高かった。具体的関心の対象は,15カテゴリあり【色彩の選択】【全体の調整】【着心地の良さ】【弱点を隠す装い]【加齢に伴う変化への対応】などであった。おしゃれを積極的にする動機は【自分らしい装い】【他者から見られることへの意識】【生活のけじめ】など7カテゴリ,消極的動機は【外出頻度の減少と購買制限】【年齢による意欲の低下】など5カテゴリであった。
施設職員は,高齢者の個性豊かなおしゃれへの思いを知り,日常的に行えるおしゃれを意識して援助する必要がある。