要 旨
本研究の目的は、脳卒中発症後の体験に関する闘病記を質的記述的に分析し、麻痺を伴う脳卒中発症により患者が主観的に捉えた身体状態を病期ごとに明らかにすることである。分析対象となった闘病記は3冊であり、著者の疾患はいずれも脳梗塞であった。内容分析の結果、急性期4カテゴリ、回復期4カテゴリ、維持期5カテゴリが抽出された。急性期では【コントロールを失い混乱の中で何が起きているのかわけが分からない】と混乱する状態であったが、動作が行えないことにより障害を実感していた。回復期では、リハビリテーションの開始によって動作に関連した身体状態が多かった。その中でも、【動きが不自然だがようやく動かすことができる】は急性期とは異なり、ある程度回復の実感をしながらも発症前とは異なり、不自然にしか動かすことができない身体状態を捉えていた。維持期では、退院した後も麻痺による何らかの不快な症状や不自由な身体に対するネガティブな身体状態と【身体機能の改善と共に対処法を獲得し適応へと向かっている】とポジティブな身体状態が混在していた。以上より主観的に捉えた身体状態は病期ごとに異なる特徴があり、病期ごとの主観的体験を踏まえて関わっていくことの必要性が示唆された。