日本重症心身障害学会誌
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Print ISSN : 1343-1439
一般演題
O-2-⑥-2 重症心身障害児のライフラインである経腸栄養ルートにとって旧規格製品は必要な選択肢である
淺野 一恵永江 彰子徳光 亜矢片山 珠美口分田 政夫
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2022 年 47 巻 2 号 p. 305

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抄録
2019年国際整合と誤接続防止の目的で国際規格の国内導入に伴いこれまで普及してきた888号コネクタの供給停止が国の方針で決定した。長期的に経腸栄養を使用する重症心身障害医療の現場から一本化には課題があるとの声が上がり、問題解決のためのプロジェクトチームが立ち上がった。 1.学会プロジェクトチームの検証:重症心身障害児施設看護師を対象にした調査の結果、コネクタ着脱回数は一勤務平均32回最大187回と頻回であった。施設看護師1082名への調査では手首痛を抱えるものが半数おり、捻り操作や備品着脱によりさらに介護負担がかかることが危惧された。 2.厚労省研究班メンバーとしての検証新規格導入後の大規模アンケートでは、当事者の52%でミキサー食注入を実施しており、加圧バッグ・電動ポンプの使用率、簡易懸濁法実施率等が病院とは違う実態も判明した。82%が旧規格と比較し総合的使用感が悪くなったと回答し、特に薬剤吸い上げやコネクタ部洗浄、ミキサー食・半固形栄養注入での困難感が指摘された。30%で既存規格と比較し安全性が低下したと回答した。筋電図を用いての筋負荷実験や薬剤投与模擬検証でも課題が浮かび上がった。2022年5月研究班提言や当事者からの要望を受けて、国は新規格の使用が困難な場合において、旧規格の使用が可能であるとの方針に見直した。関連4学会からはミキサー食/半固形栄養の注入と減圧排液においては、旧規格の使用が必要となりうるとの意見が提示された。それぞれの医療現場での患者安全を守るために、我が国では両規格の使用が可能となった。高度医療病院と誤接続が起こりにくい在宅や長期療養施設では栄養管理の位置づけ、栄養内容、人的物的資源、使用場所、防止すべき重大事故の内容、患者安全を守るために求められるデバイス機能等は異なる。どちらも患者安全を守ることを優先事項とし、最適なデバイスを選択出来るシステム構築が望まれる。
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© 2022 日本重症心身障害学会
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