医療看護研究
Online ISSN : 2758-5123
Print ISSN : 1349-8630
研究報告
認知症患者の専門病棟における入院長期化の要因
-退院支援に向けた事例分析-
小川 妙子湯浅 美千代石塚 敦子内村 順子本田 淳子武井 テル
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2007 年 3 巻 1 号 p. 43-49

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抄録

 認知症患者の専門病棟における入院長期化の要因を患者,家族,医療,看護要因の4つの視点から事例分析し,看護職者の退院支援の課題を検討した。首都圏の高齢者専門病院の3つの認知症病棟に90日以上入院し,研究協力に承諾した31名を対象とした。文献検討により35項目の調査票を自作し,約2ヵ月の調査期間に看護記録と診療記録から患者,家族,看譲,医療に関する要因のデータを収集した。その結果,患者要因のうち半数以上の事例に共通の特徴は重度の認知障害,高い転倒リスク,移動,食事,排泄の基本的生活行動の要支援状況であった。家族要因では,独居と高齢者夫婦世帯が45%と半数弱を占めた。家族の退院先の意向は,療養型施設への入所が多く,自宅復帰が少なかった。看護要因では,福祉職との連携はあるものの,訪問看護との連携はなかった。医療要因では,退院に関する説明対象は家族のみが過半数を占めた。各要因から認知症例患者の長期入院の5タイプとは,【Ⅰ. 症状安定・家族介護困難による施設探索・待機】【Ⅱ. 症状持続・悪化による入院継続】【Ⅲ. 家族と医療者の意向未調整による入院継続】【Ⅳ. 時間消贅を伴う家族と医療者間の円滑な退院調整】【Ⅴ. 家族介護力脆弱による自宅退院に向けた社会資源導入準備】であった。看護職者による各タイプに応じた退院支援の必要が示唆された。

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© 2007 順天堂大学医療看護学部
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