日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第46回日本家庭科教育学会大会
セッションID: 14
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第46回大会口頭発表
環境配慮型資源管理能力の形成に関する研究
-中・高・大学生の生活行動と自然親和性について-
*野田 文子
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抄録

1.研究目的 
 家庭科では、生活主体者としての意思決定能力と、生活課題の解決能力の育成を教科指導の主な目的としてきた。近年これに加えて、自らの生活に環境配慮的な変革をもたらす能力の育成が重要な役割となってきている。環境配慮型資源管理能力は、生活経験や自然体験に基づく感覚領域の自然感受性や、認識領域である環境と人間の生活に対する環境価値観、意識領域である生活や社会への変革意識の段階を経て、環境配慮的な資源管理行動として出現すると考え、これらの段階の関連性を明らかにし、家庭科教育における環境配慮型資源管理能力育成のための基礎的資料とすることにした。本報告では、野外活動体験や日常生活の自然接触の実態が資源管理行動に及ぼす影響を明らかにする。
2.研究方法 
 資源管理行動には発達段階による特徴と性差があると考えられるため、中学生、高校生、大学生の男女を対象に調査を行うことにした。調査方法は、自記式アンケート調査とし、2001年9月から11月にかけ、学校に配布・回収を依託して行った。生活地域による自然体験差を回避するため、調査地域を大阪府、奈良県、兵庫県、三重県、大分県の複数の地域から対象学校群を選んだ。ただし、兵庫県では中学校と高等学校、三重県は大学だけが対象となった。
3.結果と考察  
?有効回答者数:調査票の回収率は98.9%で、その内の有効回答率は、中学枚99.1%、高校99.6%、大学97.8%であった。有効回答数は、中学校男子427人、女子401人、高校男子478人、女子526人、大学生男子324人、女子454人の計2610人であった。男女構成比は、男子47.1%、女子52.9%と女子がやや多い。発達段階ごとの構成比は、中学生31.7%、高校生38.5%、大学生29.0%と大学生がやや少ない。
?資源管理行動の特徴:資源管理行動について24項目を設定した。各項目ごと日々の行動を肯定から否定までの4段階で評価して貰い、度数分布表を作成すると同時に各項目の平均値について検定値を2.5としてT検定を行った。t値が正の方向に大きく、肯定者が多かった項目は、ごみの正しい分別、ごみ分別の満足感、不用品の温存、リフオームの楽しみ、手入れのしやすさの重視、故障品の修理、必要性の検討、節電に関する8項目であった。逆に否定者が多かった項目は、再生品の購入、リフォームの活用、中古品の活用、環境配慮の購入、環境汚染防止活動、有機栽培品の購入、堆肥化の努力、地域環境醸成活動への参加、近隣の物の購入、省エネの工夫に関する10項目であった。公共交通機関の活用に関する項目は、有意差が認められなかった。この他、発達段階、性差、地域をそれぞれ独立変数として一元配置の分散分析を行った。発達段階、男女間で特徴がみらた項目と、全くみられなかった項目があった。例えば、再生品の利用では性差は認められなかったが、男子に中古品の活用者が多いことがわかった。これらの分析結果を踏まえて、資源管理行動を具体的な指標とするため、信頼性の検定を行った。
さらに、?自然体験の特徴、?自然感受性の特徴を明らかにし、それぞれの項目を加算して指標とした。その後、資源管理行動との相関求めた結果、自然感受性を示す項目と資源管理行動は、.512と高い相関が見られた。環境配慮型の資源管理能力の形成には、感覚領域である自然感受性による影響が高いことから、教育の方法として自然環境の活用も有効な手立てとして考えることができる。生活背景や学習経験、環境価値観、変革意識と資源管理行動の関連についても今後、分析を行っていきたい。

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© 2003 日本家庭科教育学会
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