日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第46回日本家庭科教育学会大会
セッションID: 13
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第46回大会口頭発表
討議を生かした授業づくりの可能性
-繊維製品のリサイクルに関する授業実践を通して-
*福田 典子
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抄録

◆目的 教室ディべ-トをアレンジした方法で、討議を行い様々な教育効果を期待する実践が行われている。国語では話す力を、社会では問題を掘り下げる力をそして、学級経営では学級の人間関係づくりの力を養うことなどがその期待される教育効果の一例として知られている。さらにその教育効果として、広くは相手の立場をより理解し、多角的な視点を養うことなども期待される。家庭科においても、指導方法の1つとして、その特質を理解し、効果的な利用方法に関する検討が必要がある。そこで、本研究では 繊維製品の廃棄やリサイクルについて、教室ディベートに似た討議を取りいれた授業実践を行い、その指導方法について考察することを目的とした。
◆方法 研究授業は1999年11月、国立大学構内において、90分の2回で実施した。授業対象は国立大学大学生21名(男1名、女20名)であった。第1次では家庭から排出された寝具・インアリア製品の実態とその問題点、およびリサイクルの可能性について資料等から読み取ることを通して、廃棄の方法に問題意識をもつことを目的とした講義中心の授業であった。第2次では教室ディベートに似た討議を通して、寝具・インテリア製品の焼却による環境への影響やリサイクル技術についての理解を深め、廃棄を意識した購入行動ができる消費者としての態度を身につけることを目的とした授業であった。「繊維製品のリサイクルは必要である」をテーマとして、肯定派、否定派、判定者に分かれ討議を行った。授業前後にプリテストおよびポストテストを実施した。テストの結果を分析し、学習内容の理解度に与える討議における役割の影響を中心として検討を行った。また、授業前後にアンケート調査を実施し、学習者の意識面への影響について、課題についての学習意欲、購入時の実践意欲の観点より考察した。さらに、その他の授業記録より家庭科における教室ディベートに似た討議について、授業計画、テーマ設定、役割分担、進行方法、時間計画、判定方法、授業評価方法、等の観点より考察を深めた。
◆結果 ?全体的な授業効果についてプリテストおよびポストテストの結果を分析したところ、平均得点(50点満点)において、約19点の得点増大が得られ、授業後の学習者の知識・理解度の向上を確認できた。 アンケート調査結果を得点化して分析したところ、廃棄方法についての学習意欲は、授業後やや増大する傾向が得られた。購入の際にリサイクルを考慮して選択したいという実践意欲も、授業後やや増大する傾向が得られ、意識面においても概ね学習効果が確認された。
?討議における役割(肯定派、否定派、判定者)が学習者の知識・理解度に与える影響についてポストテストの結果を平均得点(50点満点)において、役割別に分散分析を行ったところ、授業後の学習者の知識・理解度に対して役割の影響がないことが明らかとなった。このことにより、判定者という立場においても十分に学習効果が期待できることが確認できた。さらに、討議を生かした家庭科授業を効果的に進める指導の在り方について、授業計画、テーマ設定、役割分担、進行方法、時間計画、判定方法、授業評価方法、等の観点より幾つかの知見を得た。

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© 2003 日本家庭科教育学会
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