日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第46回日本家庭科教育学会大会
セッションID: 7
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第46回大会口頭発表
家庭科授業プリントに見る中学生の生活実態
-「家族と家庭生活」領域の授業の事例から-
*岩崎 香織
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抄録
【目的】家族を扱う授業では、生徒のプライバシー配慮が課題となる。しかし、多様な家族形態が出現している今日、何をどうしたら生徒のプライバシーを配慮できるのか非常に難しい。そこで、授業の何が生徒に影響を与え、どう効果や傷をもたらすのか、具体的な事例を元に研究を進めていく必要があると思われる。本研究では、中学校技術・家庭科「家族と家庭生活」領域において、調査者が作成・実施した授業を対象とし、生徒が記述した授業プリントからみえた生徒の生活実態(家族イメージ・自立度・ストレス度・将来展望)を明らかにし、家庭科教育への示唆を得ることを目的とする。
【方法】学習指導案は、開隆堂『技術・家庭一家庭分野-』、牧野編『家庭科ワークブック』(1996、1999、2002)等を参考に作成した。対象資料は、授業中に実施した?家族イメージビンゴ、?自立度チェック 牧野編1996)、?私と家族叫10年後・20年後-(牧野編2002参考)、?ストレスチェック(牧野編1999)の4つのワークシートである。実施時期は、2003年2~3月(2時間*全4回)。対象者は、東京都私立女子中学校1年生140名(4クラス)である。
【授業テーマおよび展開】授業テーマは、「思春期・青年期の心身の変化と人間関係」とした。これまで批判されてきた「理想の家族」の押し付けにならないよう、家族も友人や恋人と並ぶ人間関係の一つであり、時代や成長とともに変化することを強調した。第1回目授業は、「思春期・青年期の心身の変化」をテーマとして、中学校段階の心身の変化・自分に対する自信・学校生活に関する統計資料の紹介および、家族イメージビンゴ・自立度チェックのワークを行った。第2回目授業は、「家族も社会も人間も変化し続けるものである」をテーマとし、私と家族―10年後・20年後―のワーク、および日本の家族に関する統計資料(社会の高齢化・生き方の多様化・男女別大学等進学率・第1子出産年齢の推移・母親の育児不安・父親不在)の紹介、成長発達の個人差・失敗からの立ち直りについて事例をもとに説明を行った。第3回目授業は、「失敗から立ち直ることについて?」をテーマとして、映画『アメリ』の鑑賞を2クラスのみ実施した。第4回目授業は、「家族のトラブルと解決の方法 自分を好きでいることと、人を好きになっていくこと」をテーマとして、いろいろな生き方・暮らし方の紹介、日本の家事分担時間・地域に対する期待・家族で問題が起こった時の中学生の行動について統計資料の読み取りを行い、今後の人間関係を充実させていくために、ストレスチェック・人の良いところ探しのワークを実施した。
【結果および考察】<家族イメージビンゴ>全16個のマスに家族のイメージを書き込みビンゴを行った。ほとんどの生徒は、全マスに言葉を書き込むことができ、空欄を作った生徒は全体の8%のみであった。家族について多くのマスに言葉を書くことによって、生徒の家族イメージの記述には、個々の記述にも多様性が認められた。
<自立度チェック>生徒の自立度が最も高い項目は「衣類のコーディネート」、最も低い項目は「自分の洗濯は自分でする」であった。
<ストレスチェック>「ちょっとあぶない!」23%「要注意!」21%「かなり危険」14%と、体にストレス症状の現れている生徒が58%と半数を超えていた。
<私と家族-10年後・20年後->10年はほとんどが今の家族との同居を想定しており、20年後は想像もつかない生徒が多く、明るい将来展望を持てる生徒と持てない生徒の差が大きかった。家族のマイナスイメージを多く書いた生徒に、自立度・ストレス度が高く、明るい将来展望をもてないケースが見られた。ゆえに、家族に複雑な感情を抱く生徒を家庭科で支援するためには、更に自立が進むよう衣食住等の知識・技術を身につけさせ、ストレス解消方法や人付き合いの技術、将来の職業・家庭について、より実践的な教育を提供をすることが有効であると思われる。
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© 2003 日本家庭科教育学会
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