日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第47回日本家庭科教育学会大会
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第47回大会ポスター発表
中学生のジェンダー意識と用語の知識
-指導の方策のために-
小澤 裕代吉原 崇恵
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p. 38

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抄録
【目的】小澤は10数年にわたって中学校の家庭科教育に携わってきたが、生徒達の家庭生活や保育領域の学習に限らず、食物や被服の学習においてもジェンダーバイヤスにとらわれた言動に直面し、それが家庭科学習の阻害要因であることを痛感していた。それは現実の家庭生活や学校生活において意図的、無意図的に性による固定的な役割分業意識や生き方に影響を与えてきたことによるものであり、多くの研究で指摘されていることである。家庭科教育の分野では、これまで高校生を対象にした報告が見られた。今回は中学生を対象にジェンダー意識の実態と指導の方策を考察する。とくに、ジェンダーに関する用語はその意味や制度を含めて理解し考えていく内容を持つものであるが、中学生には学ぶ機会が少ないのではないかと思われる。公民を含めてジェンダーに関する知識の有無がジェンダー意識に関係しているかどうかを明らかにする。またジェンダーバイヤスを克服するための方策を考えるために中学生の意識の事例を通して背景や要因の例を明らかにする。
【方法】(1)自記式質問紙調査 対象は静岡県内公立中学校3年生、4校。配布数377、有効回答数377(男子195、女子182)であった。調査時期 2002年7月。(2)質問紙調査の回答者から10名を抽出した。抽出の要件はジェンダー観(男女平等観、性別役割分業観、性差観)の項目を賛成、反対の尺度で計り平均値を用いた。もう一つはジェンダーに関する用語の知識(ジェンダー、夫婦別姓、性別役割分業、育児休業制度、男女共同参画社会、3歳児神話、子育て支援)の有無の二点である。ジェンダーバイヤスの傾向がある者(男子4名、女子3名)、ジェンダーフリーの傾向がある者(男子1名、女子2名)を抽出した。
【結果】
(1)ジェンダーに関する用語とジェンダー意識 用語を聞いたことがあり意味を知っていると解答した者が比較的多かったのは「夫婦別姓、男女共同参画社会、育児休業制度」であった。それに対して「子育て支援、性別役割分業、ジェンダー、3歳児神話」は5%~15%未満であった。性別役割分業の用語は家庭科の全般に関わる用語であると思われるが始めて聞いたと言う者が59.9%に及んでいた。父親の育児参加や仕事と家事育児の両立に賛成のジェンダーフリーの傾向を持つ者は用語の知識を持っている方に多く見られた。とくに「夫婦別姓、性別役割分業、育児休業制度、男女共同参画社会」の用語との関連が見られた。それに対して「子育て支援、3歳児神話」では関連が見られなかった。また、用語の知識は持っていても「家事・育児は女性の仕事」とする性別役割分業、「女子は仕事を持っても家事育児はきちんとすべき」の責任感においてジェンダーバイヤスの意識が顕著であった。
(2)インタビューは2003年3月対象者の通う中学校の応接室で小澤が行った。生徒のジェンダー意識は、父母の生活や意識を肯定している場合、否定している場合があった。自分の母親を見て「女性の仕事は家事・育児と両立できるパートがよい。男子はフルタイムで働いて家計を支えるのであり、男性のパートは受け入れられない」と考え、自分の将来像も同様に描いているタイプがあった。父親が仕事をしていないように思える場合にもそれを否定し、このタイプになる事例があった。ジェンダーフリーになる生徒の意識の背景は、共働きの父母の影響とともに、家庭科で保育園実習をして幼児と関わることの楽しさを知ったこと、自分の将来像としても会社の制度や地域の施設を利用していきたいことをあげていた。育児休暇制度のことを知り、不十分な点は変えていかなければならないと考えている場合もあった。このような生徒達は情報や意見を交換し、制度を学び知識を共有する学び方が可能であることがわかった。
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© 2004 日本家庭科教育学会
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